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英国急伸とジョージア規制ショック。バハマ反発、シンガポール失速から見る4月の中古車輸出市場

  • 7月5日
  • 読了時間: 13分
2026年4月の中古車輸出分析

2026年4月の日本中古車輸出は、3月とは明らかに違う動きを見せた。

今回の対象30カ国合計は、3月の126,515台から4月は121,873台へ減少した。減少台数は▲4,642台、前月比では▲3.7%である。

3月は全体で小幅増だったが、4月は減少に転じた。30市場中、増加したのは13市場、減少したのは17市場である。

ただし、4月の中古車輸出を「全体的に弱かった」と見るだけでは不十分だ。中身を見ると、英国が大きく伸びる一方で、ジョージアとシンガポールは制度・コスト要因で大きく落ちている。さらに、マレーシア、チリ、ニュージーランドなど、3月まで強かった市場の反動減も目立つ。


今回注目すべき増減率ランキングは次の通りである。

区分

3月

4月

増減台数

前月比

上昇率1位

英国

2,938台

4,258台

+1,320台

+44.9%

上昇率2位

バハマ

412台

500台

+88台

+21.4%

下落率1位

ジョージア

1,741台

992台

▲749台

▲43.0%

下落率2位

シンガポール

337台

208台

▲129台

▲38.3%

今回のポイントは、増減率だけで判断しないことである。

英国は上昇率1位であるだけでなく、増加台数でも+1,320台と対象30カ国中最大だった。これは実需を伴う動きとして見る価値がある。

一方、バハマは+21.4%と大きく見えるが、増加台数は+88台にすぎない。小型市場特有の船積みロットや在庫補充の影響も考えるべきである。

ジョージアは▲43.0%と大きく減少し、しかも背景に4月からの税制変更がある。これは単なる月次変動ではなく、商品構成そのものを見直すべきシグナルである。

シンガポールは▲38.3%だが、減少台数は▲129台である。ただし、COE高騰と輸入制度の厳しさを考えると、今後も低単価車で数量を狙う市場ではない。


中古車輸出の台数上昇率1位:英国


3月2,938台から4月4,258台へ。増加率だけでなく増加台数でも最大


英国は、3月の2,938台から4月は4,258台へ増加した。増加台数は+1,320台、前月比は+44.9%で、今回の対象国の中で上昇率1位である。

さらに重要なのは、英国が増加台数でも最大だったことだ。小型市場の一時的な反発ではなく、実台数を伴う増加である。

英国市場では、2026年4月の新車登録が前年同月比+24.0%の149,247台となった。SMMTは、この4月実績について、前年4月が税制変更前の駆け込みの反動で弱かったこと、フリート・個人・法人の全セクターで増加したことを指摘している。また、電動車は4月の新車登録の53.2%を占め、BEVは前年同月比+59.1%となった。

一方、英国の中古車市場は2026年第1四半期に2,016,232台で、前年同期比▲0.2%とほぼ横ばいだった。ただし中身を見ると、BEV中古車取引は+32.0%、HEVは+27.6%と伸びており、電動化車両の中古需要は明確に拡大している。

日本中古車輸出にとって、英国は右ハンドル市場である点が大きい。日本仕様車は英国の道路環境と親和性が高く、JDM系モデル、ハイブリッド車、低走行車、状態の良いミニバン・SUV・スポーツモデルは一定の競争力を持つ。

ただし、英国は成熟市場であり、単に「安い車を送れば売れる」市場ではない。

英国へ車両を恒久的に輸入する場合、輸入申告、VAT・関税の支払い、HMRCへの通知、車両承認、DVLA登録、保険加入などの手続きが必要である。GOV.UKは、車両が到着後14日以内にHMRCへ通知する必要があること、登録前に車両承認が必要であることを示している。

また、少量・個別輸入ではIVA、Individual Vehicle Approvalが関係する。GOV.UKは、IVA制度が乗用車、商用車、バス、トレーラーなどの単独または少量輸入に利用される制度であると説明している。


輸出実務上の判断:積極。ただしJDM・HEV・高品質車に絞る


英国向けは、4月データ上では明確にポジティブである。ただし、狙うべきは低価格帯の数量勝負ではない。

英国で強いのは、状態の良い日本仕様車、希少グレード、JDMスポーツ、ハイブリッド、ミニバン、SUV、整備履歴が明確な車両である。特に英国では、国内中古車市場が厚いため、一般的な量販車を日本から送るだけでは差別化しにくい。

輸出側は、以下を徹底すべきである。

車両状態、走行距離、修復歴、下回り、整備記録を明確にする。IVA・MOT・登録時の改修可能性を事前に確認する。モデルレポートや適合情報の有無を現地バイヤーと共有する。日本国内相場だけでなく、英国現地の小売価格と登録後コストから逆算して仕入れる。

4月の英国向け増加は、単なる月次ノイズではない。右ハンドル親和性、電動化中古車需要、JDM需要、現地市場回復が重なった実需型の伸びとして評価できる。


中古車輸出の台数上昇率2位:バハマ


412台から500台へ反発。ただし小型市場として読むべき


バハマは、3月の412台から4月は500台へ増加した。増加台数は+88台、前月比は+21.4%で、上昇率2位となった。

ただし、バハマは小型市場である。+21.4%という数字だけを見ると強く見えるが、実台数では+88台にすぎない。これは、船積みロット、在庫補充、販売店の資金繰り、通関タイミングによって大きく振れやすい規模である。

バハマ市場の背景には、観光・クルーズ・建設関連の需要がある。バハマ中央銀行は2026年3月時点で、国内経済の成長ペースが維持され、観光部門ではクルーズ収入とストップオーバー収入が伸びたと説明している。一方で、輸入燃料や輸入品コストによる物価圧力も指摘している。

バハマ向けで最も重要なのは、着地原価である。

バハマ税関は、輸入できる車両について原則10年以内とし、10年超の車両には財務省の事前承認が必要で、陸揚げ価格の20%の環境税が適用されると説明している。また、Certificates of DestructionやSalvage / Non-rebuildable titleを持つ車両は禁止されている。

さらに、バハマ税関のDuty Calculatorでは、関税、1%処理手数料、環境税、運賃、陸揚げ価格、10%VATが計算項目として示されている。つまり、顧客が最終的に見る価格はFOBではなく、CIF、税金、港湾費、登録費用を含めた総額である。


輸出実務上の判断:維持・案件選別。総額提示が必須


バハマ向けは、数量で攻める市場ではない。重要なのは、現地ユーザーが支払う最終コストをどれだけ正確に提示できるかである。

特に、以下の車両は検討対象になりやすい。

燃費の良いコンパクトカー。状態の良い小型SUV。観光・送迎用途のハイエース、キャラバン、コースター系。建設・メンテナンス用途の小型商用車。

ただし、10年超車両、サルベージ扱いの車両、修復歴の説明が難しい車両は注意が必要である。安い車両ほど、税金・環境税・整備費が総額に占める比率が高くなり、現地販売価格とのズレが生じやすい。

4月の+21.4%はポジティブだが、過度に強気になる数字ではない。バハマは、正確な着地原価と用途別提案で利益を取る市場である。


中古車輸出の台数下落率1位:ジョージア


4月からの税制変更が直撃。6年超・右ハンドル車の採算が変わった


ジョージアは、3月の1,741台から4月は992台へ減少した。減少台数は▲749台、前月比は▲43.0%で、今回の下落率1位である。

この減少は、単なる需要減ではない。最大の背景は、2026年4月からの車両税制変更である。

ジョージア議会によると、乗用車の物品税は、0〜6年車が1ccあたり1.5GEL、6年超車が1ccあたり4.5GELに設定された。さらに、右ハンドル車は基本税率の3倍、左ハンドル・ハイブリッド車は基本税率から60%軽減される。4月1日以前にジョージアへ輸入された車両、または4月1日以前に輸送が開始された車両については、経過措置も示されている。

この変更は、日本中古車輸出にとって大きな意味を持つ。日本から輸出される車両の多くは右ハンドルであり、さらにジョージア向けでは6年超の中古車も重要な商品帯だった。つまり、4月以降は「6年超」と「右ハンドル」が同時にコスト上昇要因になりやすい。

ジョージアは、単なる国内消費市場ではない。黒海沿岸の港湾を通じて、コーカサス、中央アジア方面へ車両が流れる再輸出ハブとしても機能してきた。Gnomon Wiseは、ジョージアからカザフスタン・キルギス向けの自動車再輸出が、2021年の4,800台から2024年には83,500台へ増加し、その総額が40.41億ドルに達したと分析している。

また、Jamestown Foundationは、ジョージアの自動車再輸出が2021年以降大きく拡大し、2025年上半期には軽車両の再輸出額が12億ドルに達し、ジョージアの総輸出の38%を占めたと報じている。主な行き先は中央アジアである。

このように、ジョージア向け台数は現地需要だけでなく、再輸出の採算にも左右される。4月の下落は、税制変更によって再輸出ビジネスの計算が一時的に止まった、または3月までに駆け込みが発生し、4月に反動減が出た可能性が高い。


輸出実務上の判断:6年超・右ハンドル車は要再計算


ジョージア向けは、4月以降、商品選定を根本的に見直す必要がある。

特に注意すべきなのは、以下の車両である。

6年超の排気量が大きい車両。右ハンドル車。再輸出前提で、現地登録や通関条件が曖昧な車両。船積み開始日、B/L日付、到着日、通関日が税制上の経過措置に関わる車両。

今後は、ジョージア向けに仕入れる前に、現地ブローカーや通関業者へ以下を確認すべきである。

税率適用日は船積み日なのか、到着日なのか、通関日なのか。再輸出前提の場合、国内登録と同じ扱いになるのか。右ハンドル車の追加負担が最終販売価格にどれだけ影響するのか。6年以内車、低排気量車、ハイブリッド車で採算が残るのか。

4月の▲43.0%は、単なる一時的な下落ではなく、ジョージア向けの商品構成が変わるサインである。今後は、古い右ハンドル車をそのまま送る戦略ではなく、税制に合わせた年式・排気量・ハンドル位置・再輸出先の再設計が必要になる。


中古車輸出の台数下落率2位:シンガポール


COE高騰と輸入コストが、低単価車の余地を削る


シンガポールは、3月の337台から4月は208台へ減少した。減少台数は▲129台、前月比は▲38.3%で、下落率2位である。

台数規模としては大きくない。しかし、シンガポールは中古車輸出業者にとって非常に特殊な市場であり、数字以上に制度面を見る必要がある。

LTAによると、シンガポールでは新車または3年未満の中古車、クラシック・ヴィンテージ車などを輸入できる。輸入時には、車両価格、保険、運賃、関税などを含めた総輸入コストに9%GSTがかかる。また、乗用車の輸入ではOMV、Open Market Valueに対して20%の物品税が課される。

さらに、シンガポール市場を決定づけるのがCOEである。

2026年4月のCOE結果では、第1回入札でCat Aが118,000シンガポールドル、Cat Bが121,000ドル、Cat Eが121,001ドルだった。第2回入札では、Cat Aが123,010ドル、Cat Bが121,001ドル、Cat Eが125,002ドルとなっている。

この水準では、安い中古車を輸入しても、最終価格の大部分をCOEと税金が占める。したがって、シンガポール向けは、低単価車の数量市場ではなく、希少性・状態・仕様・ブランド価値で勝負する市場である。

4月の▲38.3%は、小型市場の月次変動も含む。しかし、COEが高い状態では、輸入車の選別はさらに厳しくなる。


輸出実務上の判断:低価格車は不向き。希少・高付加価値車に限定


シンガポール向けでは、仕入れ前に次の項目を必ず確認すべきである。

車齢が3年未満に収まるか。OMVがどの水準で評価されるか。COEカテゴリーがどれに該当するか。ARF、GST、物品税、VES、登録関連費用を含めた最終価格が現地相場に合うか。クラシック・ヴィンテージ扱いを狙う場合、適用条件を満たすか。

シンガポールでは、単に「良い車」では不十分である。現地で登録した後の総額が高くなるため、輸出側は高価格でも買う理由がある車両を選ぶ必要がある。

候補になるのは、低走行の高年式車、限定グレード、スポーツモデル、ラグジュアリーモデル、希少なクラシック、法人・コレクター向けの明確な価値を持つ車両である。

4月のシンガポール減少は、撤退サインではない。ただし、低単価車の数量勝負をする市場ではないことを再確認する数字である。


4月の補足:UAE低迷継続とマレーシア反動減も見逃せない


今回の増減率ランキングでは、UAEとマレーシアは上位2・下位2には入らなかった。しかし、実務上は見逃せない。

UAEは3月1,499台から4月966台へ、さらに▲35.6%減少した。3月にすでに大きく落ち込んでいたため、4月の下落率ランキングではジョージアとシンガポールに次ぐ位置になったが、UAEの低迷継続は重要である。

Reutersは、2026年4月の日本から中東向け自動車輸出が、ホルムズ海峡の事実上の閉鎖により数量・金額ともに前年比90%以上減少したと報じている。中東は2025年に日本の自動車輸出の約14%を占めた地域であり、中古車にとっても重要な地域である。

また、3月時点でもReutersは、日本・韓国の中古車輸出が中東危機で混乱し、ドバイ向け貨物の迂回、港湾混雑、船積みキャンセル、追加保証金要求などが発生したと報じている。

つまり、UAEの数字は「3月だけの異常値」ではなく、4月にも続いた物流・再輸出ハブ問題として読むべきである。

一方、マレーシアは3月5,791台から4月3,607台へ、▲2,184台、▲37.7%と大きく減少した。減少率では3位だが、減少台数では今回最大である。

マレーシアは、MITIのApproved Permit制度に左右される市場である。MITIは、Open APの対象を1年以上5年以下の中古・リコンディションCBU車・二輪としている。

3月に大きく伸びた反動、AP枠、現地在庫、登録タイミングが4月の下落に影響した可能性がある。マレーシア向けでは、引き続きAP保有者との関係、車齢5年以内、着地原価、高年式・高付加価値車への絞り込みが重要である。


4市場の経営判断

市場

4月の動き

推奨スタンス

判断の核心

英国

+44.9%

積極・選別拡大

右ハンドル親和性、JDM、HEV、品質説明

バハマ

+21.4%

維持・案件選別

小型市場、観光需要、着地原価

ジョージア

▲43.0%

慎重・商品再設計

6年超税率、右ハンドル負担、再輸出採算

シンガポール

▲38.3%

超選別

COE高騰、3年未満条件、高付加価値車限定


まとめ


2026年4月の日本中古車輸出は、対象30カ国合計で前月比▲3.7%となり、3月の小幅増から減少に転じた。

しかし、4月市場の本質は「全体減」ではない。国ごとに、伸びた理由と落ちた理由がはっきり分かれた月である。

英国は、3月2,938台から4月4,258台へ+44.9%増加した。右ハンドル親和性、JDM需要、ハイブリッド需要、英国自動車市場の回復が重なり、実台数でも強い伸びを示した。

バハマは、412台から500台へ+21.4%増加した。ただし小型市場であり、観光・商用需要に支えられつつも、税金・環境税・VATを含めた着地原価管理が利益を左右する。

ジョージアは、1,741台から992台へ▲43.0%減少した。4月からの税制変更により、6年超車、右ハンドル車、排気量の大きい車両の採算が大きく変わった。再輸出ハブとしての役割も含め、今後は商品構成の見直しが不可欠である。

シンガポールは、337台から208台へ▲38.3%減少した。COE高騰、3年未満条件、GST、物品税、登録費用により、低単価車の輸出余地は狭い。狙うべきは希少性と高付加価値である。

さらに、UAEの低迷は4月も続き、マレーシアは減少台数で最大となった。4月は、物流リスク、税制、AP、COE、再輸出採算が台数に強く反映された月だった。


結論は明確である。中古車輸出は、国別の台数だけでは読めない。英国では品質とJDM価値、バハマでは着地原価、ジョージアでは税制と年式、シンガポールではCOEと高付加価値性が勝敗を決める。2026年4月以降、輸出業者に求められるのは、単に「伸びている国へ送る」判断ではない。国ごとの制度変更、登録コスト、物流リスク、最終販売価格を一体で読み、仕入れ前に利益が残るかを逆算する力である。


国名

Country name

3月

4月

ロシア

RUSSIA

19,424

19,966

アラブ首長国連邦

UAE

1,499

966

モンゴル

Mongolia

8,104

7,572

タンザニア

Tanzania

16,106

15,885

ニュージーランド

NEW ZEALAND

8,772

7,412

バングラデシュ

BANGLADESH

1,750

1,971

フィリピン

PHILIPPINE

3,452

3,931

タイ

Thailand

4,107

4,551

ケニア

KENYA

6,605

6,929

ジャマイカ

JAMAICA

1,793

1,461

南アフリカ共和国

SOUTH AFRICA

7,661

8,187

マレーシア

MALYSIA

5,791

3,607

チリ

CHILE

9,395

7,728

ウガンダ

Uganda

4,237

3,700

オーストラリア

AUSTRALIA

2,059

2,244

ザンビア

Zambia

2,021

2,027

英国

United Kingdom

2,938

4,258

アメリカ合衆国

United states of america

1,453

1,012

モザンビーク

Mozambique

1,502

1,421

ガイアナ

Guyana

2,697

2,643

コンゴ民主共和国

Democratic Republic of the Congo

1,935

1,896

アイルランド

Ireland

2,265

2,598

ミャンマー

Myanmar

987

1,047

ナイジェリア

Nigeria

2,275

2,240

ジョージア

Georgia

1,741

992

フィジー

Fiji

736

788

ガーナ

Ghana

2,981

2,879

シンガポール

SINGAPORE

337

208

ジンバブエ

Zimbabwe

1,480

1,254

バハマ

Bahamas

412

500

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