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【2025年11月中古車輸出の統計分析】4カ国の「異常値」が示す、輸出ビジネスの構造的断層

  • 2月5日
  • 読了時間: 9分

序:数字の「外側」にある真実

2025年11月の統計データ(10月通関)は、通常の市場変動ではありません。「ミャンマーの軍政下での資金逃避」「ジャマイカの年式レギュレーションのデッドライン」「マレーシアの補助金カットという政治的ショック」「モンゴルの都市計画によるナンバー発給制限」という、極めて政治的かつ実務的な要因が、数字を暴力的に動かしました。

本レポートでは、急増・急落した4カ国の「現場の血流」を診断し、明日からの入札・配船戦略を決定づけるインサイトを提供します。


11月の中古車輸出台数グラフ

11月の中古車輸出台数の増減割合グラフ

📈 急増の深層:規制の「隙間」と「期限」への殺到


1. ミャンマー (+80.8% / 302台)

「SAC(国軍)の外貨統制」と「給与送金スキーム」の裏口

+80%の急増を「EVブーム」だけで片付けるのは素人です。この数字の裏には、軍事政権(SAC)による厳格な外貨統制を回避するための、複雑な金融スキームが動いています。


  • 「給与送金(Salary Remittance)」ライセンスの開放

    • 現在、ミャンマー商業省は、海外就労者(日本・韓国・マレーシア等)が正規ルートで本国へ外貨を送金した証明がある場合、その「送金額相当」のEV輸入ライセンスを優先的に発給しています。

    • 現場の実態: 日本のブローカーや人材派遣会社が、この「送金証明枠」を買い取り、実質的な輸入権利として売買する「ライセンスの流通市場」が形成されました。10月の急増は、このスキームが軌道に乗り、商用EV(日産クリッパーEV、ミニキャブMiEV)等が大量に決済された結果です。


  • SKD(セミノックダウン)の「CBU偽装」疑惑と厳格化

    • 完成車(CBU)輸入が禁止されているハイエース等を、現地で「SKD(部品輸入)」として通関させるグレーゾーン取引が横行していましたが、10月に入り税関の検査(X線および実車確認)が抜き打ちで強化されました。

    • リスク警告: これにより、今後「SKD扱いで通関できず、港で立ち往生するハイエース」が急増するリスクがあります。安易なSKD案件への関与は、車両没収に直結します。


【Strategic Action】

  • 買い対象: SoH(バッテリー健全度)80%以上の日産リーフ(ZE1)、およびサクラ。これらは「正規ライセンス」が最も降りやすい。

  • 売り対象: 2018年以前の商用車。SKDルートは閉じる可能性が高く、手出し無用。


2. ジャマイカ (+74.3% / 2,971台)

「2019年式」のロジスティクス・ロシアンルーレット

この異常な増加は、需要ではなく「恐怖」によって突き動かされています。


  • 「Jan 1st Cut-off」の絶対ルール

    • ジャマイカ貿易委員会(JTB)の規定では、2026年1月1日時点で車齢7年目(2019年製造)に入る乗用車の輸入許可証は失効します。

    • 致命的なリスク: 10月・11月船積み分は、パナマ運河の混雑やトランシップ(積み替え)の遅延により、到着が1月上旬にズレ込む可能性があります。もし1月2日にキングストン港に着いた場合、その2019年式車両は「輸入不許可→積戻し(Reshipment)」が確定します。


  • 現地ディーラーの「在庫賭博」

    • 現地では「12月中になんとか通関さえ切れば、2019年式はドル箱になる(仕入れ値が底値のため)」という投機的な動きが加速。しかし、船便の遅延リスクをヘッジしていないバイヤーが多く、1月以降に大量の「行き場を失った2019年式」がカリブ海を漂流する恐れがあります。


【Strategic Action】

  • 絶対禁止: 本日(12月)時点で、2019年式をジャマイカ向けに船積みすることは、99%の確率で事故(通関不可)になります。

  • 代替案: 誤って仕入れた2019年式在庫は、即座に「ガイアナ(8年規制)」または「セントルシア」「アンティグア」等の近隣諸国へ仕向け地変更(Change of Destination)を行ってください。


📉 急落の深層:政治リスクと構造的不況


3. マレーシア (-28.4% / 1,771台)

「T15」ショックとAPホルダーの資金ショート

この30%近い下落は、マレーシアの中古車市場のエコシステムが「構造転換」を迫られている証拠です。


  • Budget 2026:富裕層(T15)狙い撃ちの衝撃

    • アンワル首相が発表した「T15(所得上位15%)へのRON95ガソリン補助金撤廃」は、これまでの「とりあえずアルファードを買う」というマレー系富裕層の消費行動を凍結させました。

    • 実質コスト増: 補助金なしのガソリン価格は、現在のRM2.05/LからRM3.50/L以上(約70%増)になると試算されています。リッター5kmしか走らないV6エンジンのアルファード3.5L(GGH30)は、維持費の観点から「負動産」化しつつあります。


  • PEKEMA(輸入業者協会)の在庫過多

    • 現地のAPホルダー(輸入権利者)は、すでに2023-2024年に仕入れた高額在庫が捌けず、フロアプラン(在庫融資)の金利支払いに追われています。新規の仕入れを行うキャッシュフローが枯渇しており、これが統計上の急減に直結しています。


【Strategic Action】

  • 車種入替: 3.5L V6エンジンの仕入れは即時停止。ターゲットを**「2.5L ハイブリッド(AYH30/AAHH40)」、または「ホンダ・ステップワゴン(1.5Lターボ)」**等のダウンサイジング・MPVにシフト。

  • 為替予約: リンギットの対円レートが不安定なため、成約時には必ず為替予約を入れるか、USD建てでの契約を徹底する。


4. モンゴル (-19.9% / 3,630台)

「ナンバープレート発給制限」という都市封鎖

モンゴルの減少要因は「寒さ」や「不況」といった生易しいものではなく、ウランバートル市による「物理的な流入規制」です。


  • ウランバートル市交通規制(ナンバーキャップ制)

    • 2024年11月8日から、ウランバートル市は渋滞対策として「市内の車両登録台数に上限を設ける」新条例を施行しました。

    • 実務への影響: 既存の車両を廃車(抹消)しない限り、新規のナンバープレートが発給されない実質的な「入替制」への移行が議論されています。これにより、地方からの流入車や、新規輸入車の登録が極めて困難になり、バイヤーは「車があっても売れない(登録できない)」状況に陥っています。


  • RHD(右ハンドル)規制の確定情報待ち

    • 2027年以降の右ハンドル輸入禁止法案について、国会での最終決定が遅れており、この不透明感がディーラーの長期在庫保有意欲を削いでいます。「今仕入れた車が、3年後にゴミになるリスク」を誰も取りたがりません。


【Strategic Action】

  • LHD(左ハンドル)一択: 欧州や韓国、ドバイ経由の左ハンドル車(LHD)へのシフトが加速します。日本からの輸出業者は、日本国内にある「並行輸入の左ハンドル車」を探すか、LHDへのハンドル・コンバージョン(改造)キットとセットでの提案が必要になります。

  • 地方需要: 規制が厳しいウランバートル向けではなく、ダルハンやエルデネトといった「地方都市」のバイヤーを開拓する必要があります。彼らは四輪駆動の農耕用・実用車(プロボックス4WD等)を求めています。


結論:プロフェッショナルへの提言


今回の統計は、「これまでの勝ちパターンが通用しない」ことを残酷に示しています。


  1. ジャマイカでは「カレンダー」を読める者だけが生き残り、読めない者は積戻しで破産します。

  2. ミャンマーでは「送金ライセンス」を持つブローカーと組めるかどうかが全てです。

  3. マレーシアでは「3.5Lガソリン車」の時代が終わり、「ハイブリッド」への強制転換が起きています。

  4. モンゴルでは「ウランバートル以外」に販路を持てるかが鍵です。


貴社の在庫リストと照らし合わせ、上記の「危険信号」に該当する車両があれば、直ちに損切り、または仕向け地の変更を行ってください。


情報ソース: 現地パートナー通関士(ヤンゴン、ポートクラン、キングストン)、各国の官報(Gazette)、および船会社(NYK/MOL/Eukor)の最新スケジュールに基づく。

❓ 2025年11月統計・実務Q&A


以下は、2025年11月の中古車輸出統計(10月通関)に見られた異常値に関する、プロフェッショナル向けのFAQです。各国の規制変更と物流リスクに焦点を当てています。


Q1. 2025年11月にミャンマー向け輸出が+80.8%も急増した「本当の理由」は何ですか?

A. 「給与送金ライセンス」の流通と、EV関税免除の継続が主因です。 単なる需要回復ではありません。

軍事政権(SAC)の外貨統制下において、海外就労者の送金証明に基づく**「給与送金(Salary Remittance)輸入枠」がブローカー間で売買されるスキームが確立されました。加えて、関税0%が継続している電気自動車(日産リーフ ZE1、サクラ等)**が、ガソリン不足のリスクヘッジとして富裕層に大量購入されています。


Q2. ジャマイカ向けの「2019年式」車両は、12月の船積みでも間に合いますか?

A. いいえ、極めて危険です。

実務上「手出し無用」です。 ジャマイカの輸入規制(製造から6年以内)は、2026年1月1日をもって2019年式の輸入を禁止します。12月出港の船がパナマ運河やハブ港で遅延し、1月2日以降にキングストン港へ到着した場合、輸入不許可および積戻し(Re-shipment)が確定します。11月の統計急増(+74.3%)は、このリスクを回避するための「最後の駆け込み」でした。現在は2020年式以降に切り替えるべきです。


Q3. マレーシア向け輸出が-28.4%と急減しましたが、「アルファードバブル」は終わったのですか?

A. 「3.5L V6エンジン」のバブルは崩壊しました。市場はハイブリッドへ移行しています。

10月発表の国家予算案(Budget 2026)により、所得上位15%(T15層)へのガソリン補助金撤廃が決定したことが決定的要因です。実質燃料コストの倍増が見込まれるため、燃費の悪い大排気量ガソリン車(3.5L SC等)の注文がキャンセルされています。代わって**2.5Lハイブリッド(AYH30/AAHH40)**への需要シフトが起きており、車種選別を誤ると不良在庫化します。


Q4. モンゴル向けの数字が悪い(-19.9%)のは、単なる季節要因ですか?

A. いいえ、ウランバートル市の「ナンバープレート発給制限」という構造要因です。

冬の閑散期というだけでなく、2024年11月から始まったウランバートル市内の車両登録台数上限(キャップ制)の影響が出ています。既存車を廃車にしないと新規ナンバーが降りない実質的な総量規制により、バイヤーは「車があっても売れない」状態を恐れています。また、将来的な右ハンドル(RHD)禁止法案への懸念から、高額なRHD車の仕入れがストップしています。


Q5. 2025年末の時点で、輸出業者が最も警戒すべき「隠れたリスク」は何ですか?

A. ミャンマー向け「SKD(セミノックダウン)」の通関厳格化です。

統計上の台数を押し上げている要因の一つに、商用バン(プロボックス等)を部品扱いで送るSKDがありますが、10月以降、現地税関でのX線検査および現物確認が強化されています。「分解が不十分」とみなされた場合、完成車密輸として車両没収される事例が出ています。安易なSKD案件への参入は、現在最大のリスク要因です。



11月の中古車輸出台数TOP30

国名

Country name

10月

11月

増減割合

ロシア

RUSSIA

19,302

17,504

-9.3%

アラブ首長国連邦

UAE

22,690

18,583

-18.1%

モンゴル

Mongolia

4,534

3,630

-19.9%

タンザニア

Tanzania

12,360

10,441

-15.5%

ニュージーランド

NEW ZEALAND

6,055

4,866

-19.6%

バングラデシュ

BANGLADESH

1,700

2,038

19.9%

フィリピン

PHILIPPINE

3,935

3,510

-10.8%

タイ

Thailand

3,409

3,800

11.5%

ケニア

KENYA

7,259

6,282

-13.5%

ジャマイカ

JAMAICA

1,705

2,971

74.3%

南アフリカ共和国

SOUTH AFRICA

6,585

5,634

-14.4%

マレーシア

MALYSIA

2,473

1,771

-28.4%

チリ

CHILE

8,734

9,245

5.9%

ウガンダ

Uganda

3,972

3,285

-17.3%

オーストラリア

AUSTRALIA

1,809

1,792

-0.9%

ザンビア

Zambia

1,310

1,291

-1.5%

英国

United Kingdom

3,098

2,788

-10.0%

アメリカ合衆国

United states of america

1,624

1,311

-19.3%

モザンビーク

Mozambique

1,325

1,115

-15.8%

ガイアナ

Guyana

2,604

2,806

7.8%

コンゴ民主共和国

Democratic Republic of the Congo

1,146

1,412

23.2%

アイルランド

Ireland

1,557

1,289

-17.2%

ミャンマー

Myanmar

167

302

80.8%

ナイジェリア

Nigeria

2,204

2,776

26.0%

ジョージア

Georgia

1,580

1,805

14.2%

フィジー

Fiji

897

917

2.2%

ガーナ

Ghana

2,026

1,840

-9.2%

シンガポール

SINGAPORE

143

206

44.1%

ジンバブエ

Zimbabwe

1,382

1,343

-2.8%

バハマ

Bahamas

512

863

68.6%

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