日本から世界各国への中古車輸出データが発表されました。11月は輸出量の増減が顕著な国が見られます。本記事では、増加率の上位3か国と減少率の上位3か国を取り上げ、それぞれの要因を分析します。
輸出台数が大幅に増加した3か国
中古車輸出 増加割合1位 タンザニア (+41.1%)
10月: 7,052台 → 11月: 9,953台
1. 経済成長と都市化の進展
タンザニアは近年、堅調な経済成長を維持しており、2024年のGDP成長率は約5.2%と予測されています。また、都市化の進行により都市部での自動車需要が急増しています。
都市化の影響: ダルエスサラームやムワンザといった主要都市では、交通手段としての自家用車や商用車の需要が高まっています。
インフラプロジェクト: 国際港であるバガモヨ港の整備など、主要インフラへの投資が物流効率を向上させています。
2. 日本製中古車への強い信頼
日本製の中古車は、その耐久性とコストパフォーマンスからタンザニア国内で非常に高い評価を受けています。
人気モデル:
トヨタ・ランドクルーザー、ハリアー: 高い耐久性とオフロード性能により、都市部だけでなく農村部でも広く利用されています。
トヨタ・プロボックス: 商業利用や小規模ビジネスにおいて人気の高いモデルです。
メンテナンスのしやすさ: 日本製車両の部品供給が安定しており、修理やメンテナンスが容易な点も人気の一因です。
3. オンラインプラットフォームの普及
タンザニアではモバイルインターネットの普及率が急速に上昇しており、中古車購入のプロセスがオンライン化しています。
利用プラットフォーム:価格の透明性や輸入手続きの簡便さから多くのユーザーに利用されています。
デジタル決済の普及: モバイル決済サービスM-Pesaの普及により、オンラインでの支払いが容易になり、取引の活性化につながっています。
4. 円安による価格競争力の向上
2024年の円安傾向により、日本からの輸入品の価格が相対的に低下しました。これにより、日本製中古車の価格競争力が高まり、タンザニアでの需要増加につながっています。
5. ロジスティクスの改善と貿易環境
効率化された港湾運営: ダルエスサラーム港では、輸入車両の通関プロセスがスムーズになり、輸送コストの削減と納期短縮が実現しました。
貿易関係の強化: 日本とタンザニアの貿易協力が進み、輸出手続きの負担が軽減されています。
6. 時期的要因による需要の増加
11月は、タンザニア国内で需要が高まる時期です。
年末シーズン: 祝祭シーズンに向けた家族旅行や帰省需要が、個人用車両の購入を促進しています。
農業収穫期: 農村部では、収穫から得た収益を商業用車両や個人用車両に投資する動きが見られます。
2024年11月、日本からタンザニアへの中古車輸出の大幅な増加は、経済成長、消費者信頼、円安、物流改善、そして時期的要因が重なり合った結果です。
中古車輸出 増加割合2位 ケニア (+40.4%)
10月: 5,471台 → 11月: 7,679台
1. 経済成長と都市化の進展
ケニアの経済は2024年、約5.5%の成長率を記録しており、東アフリカ地域では特に堅調な経済基盤を誇っています。この成長により、都市化が進展し、自動車需要が高まっています。
都市部の需要増加: ナイロビやモンバサなどの主要都市では、通勤や物流の需要が拡大しています。特に、中間層の成長が個人用車両の購入を後押ししています。
インフラ整備の進展: ナイロビ・エクスプレスウェイやラップセット回廊(LAPSSET)プロジェクトの進行により、道路網の整備が進み、車両の利用がさらに促進されています。
2. 日本製中古車への強い信頼
ケニアでは、日本製中古車が「高品質・低メンテナンス」という理由で非常に高く評価されています。
人気の車種と用途:
トヨタ・ランドクルーザー・プラド: 農村部や都市郊外の悪路でも高い耐久性を発揮し、商業・個人利用の両方で選ばれています。
日産・エクストレイル: 家族向けSUVとして、快適性と実用性が高く評価されています。
トヨタ・RAV4: 都市部での運転に適したコンパクトSUVで、燃費性能が高い点が支持されています。
トヨタ・ハリアー: 高級感のあるSUVとして、上流階級や中間層の購買意欲を引き出しています。
修理の容易さ: 日本製車両の交換部品が入手しやすく、ケニア国内の整備工場での修理もスムーズに行えることが、消費者の信頼をさらに高めています。
3. オンライン取引とデジタル化の進展
ケニアでは、モバイルインターネットの普及とデジタル決済の活用が、中古車取引を活性化させています。
オンラインプラットフォーム: 日本から中古車を直接購入できるウェブサイトが、消費者に価格透明性と手軽さを提供しています。
デジタル決済: モバイルマネーサービス「M-Pesa」を利用した決済が普及しており、輸入プロセスが簡略化されています。
4. 円安の影響による価格競争力
2024年の円安により、日本製中古車の価格が下落しました。これにより、ケニアの中間層や小規模ビジネスオーナーが車両を購入しやすい環境が整いました。
中間層の台頭: より安価な価格帯の車両が購入可能となり、初めて自家用車を購入する層が増加しました。
5. ロジスティクスと港湾の効率化
ケニア最大の港であるモンバサ港では、通関プロセスが効率化されており、輸入車両の納期短縮とコスト削減が実現しています。
輸送改善: 港湾から内陸部への車両輸送が効率化され、輸入業者にとってのリスクが軽減されました。
輸送網の拡大: 標準軌鉄道(SGR)の活用により、ナイロビなど内陸部への車両配送が迅速化されています。
6. 季節的要因
11月はケニア国内で自動車需要が高まる時期でもあります。
年末シーズン: クリスマスや新年の準備として、家族用や商業用の車両需要が増加します。
農業収穫期: ケニアの主要な農業地域では、収穫から得た収益を商業用車両の購入に充てる動きが見られます。
2024年11月の日本からケニアへの中古車輸出の増加は、経済成長、消費者信頼、円安効果、ロジスティクス改善、そして時期的要因の相互作用によるものです。
中古車輸出 増加割合3位 ミャンマー (+36.7%)
10月: 2,558台 → 11月: 3,498台
1. 政治情勢の影響とロジスティクスの変化
ミャンマーでは軍事政権下でのクーデターが経済活動全般に影響を与えていますが、地域によっては取引や輸送が比較的安定しているエリアも存在します。
現地SNSからの観測:FacebookやTelegramなど、ミャンマーで一般的に利用されるSNS上では、主要都市ヤンゴンやマンダレーへの輸送の安全性が話題になっています。一部の地域では物流が回復しつつあるとの声も見られます。
国境貿易の再開:タイとの国境貿易が部分的に再開しており、港湾施設がミャンマー内での主要物流拠点として機能しています。
2. 経済状況の改善
国際制裁下ではありますが、現地のインフレが若干緩和されたとの報告があります。これにより、一部の富裕層やビジネス用途の車両購入が増加したと考えられます。
中間層の車両需要:バイクから車両への移行が進みつつある都市部での動向が確認されています。
商業車両の需要:小型トラックやバンが、物資輸送や地方経済の再建のために利用されています。
3. 日本製中古車への信頼
ミャンマーでは、耐久性と信頼性の高い日本製中古車が特に高く評価されています。
人気車種:
トヨタ・ハイラックスや日産・ナバラ: ピックアップトラックとして、未整備な道路にも対応可能で、農村部や地方での使用に最適です。
トヨタ・ランドクルーザー: 悪路や長距離輸送にも対応する高性能SUVとして、都市部から地方まで広く利用されています。
メンテナンスのしやすさ: 日本車は部品供給が安定しており、修理の手間が少ないため、消費者にとって実用的な選択肢です。
4. 為替レートと価格競争力
円安によって、日本からの輸出車両の価格競争力が強化され、輸入コストが抑えられたことも需要を後押ししました。
5. 環境規制の緩和
軍政下での規制緩和により、以前は輸入禁止だった一部の車両が市場に再び流入可能になったとの報道もあります。これにより、中古車市場の活性化が見込まれます。
6. 部族間の争いや地域不安定性
一部の地域での不安定性が、都市部や安定した地域への移住を促しており、移動手段として中古車が求められている可能性も指摘されています。
ミャンマーへの日本製中古車輸出は、政治的・経済的要因や円安、物流の改善といった複数の要因が重なり、大幅な増加を見せました。特に都市部での需要増加と商業用車両の需要が全体の輸出台数を押し上げています。
輸出台数が大幅に減少した3か国
中古車輸出 減少割合1位 マレーシア (-36.9%)
10月: 3,066台 → 11月: 1,936台
1. マレーシア政府の輸入規制強化
マレーシアでは、自動車の輸入には輸入許可証(AP)が必要とされています。特に中古車の商業輸入には、ブミプトラ資本のディーラーに限り発給される「オープンAP」が適用されており、政府はこれらの発給枠を調整することで輸入台数の管理を行っています。
a. オープンAP制度の変更
2024年6月、マレーシア投資貿易産業省(MITI)は、自動車業界に未参入のブミプトラ企業にも中古車の輸入許可証である「オープンAP(Approved Permit)」の申請を認めると発表しました。この措置は、2024年7月1日から適用されています。
ジェトロ
b. 政策変更の影響
この政策変更により、オープンAPの申請者数が増加し、許可証の発給プロセスに遅延や混乱が生じた可能性があります。その結果、一時的に中古車の輸入手続きが滞り、輸入台数の減少につながったと考えられます。
c. 国内自動車産業の保護
マレーシア政府は、国内自動車産業の保護と振興を目的として、輸入車に対する規制を適宜見直しています。オープンAP制度の変更も、その一環として実施された可能性があります。これにより、輸入中古車の市場参入が制限され、輸出減少の要因となったと推察されます。
2. 国内自動車産業の振興政策
マレーシア政府は、国内の自動車産業を育成するため、新車市場の拡大や地元メーカーの支援を進めています。これに伴い、中古車の輸入に対する制限が強化され、輸入台数の減少につながったと考えられます。
3. 環境規制の影響
環境保護の観点から、マレーシアでは自動車の排出ガス基準が厳格化されています。これにより、基準を満たさない中古車の輸入が制限されるケースが増加し、輸出減少の一因となっている可能性があります。
4. 経済状況と消費者需要の変化
マレーシア国内の経済状況や消費者の購買力の変動も、中古車需要に影響を与えています。経済成長や購買力の変動が中古車市場に影響を及ぼし、輸入台数の減少につながった可能性があります。
中古車輸出 減少割合2位 バングラデシュ (-25.3%)
10月: 1,472台 → 11月: 1,099台
1. 経済成長率の鈍化
バングラデシュ政府は、2024~2025年度のGDP成長率予測を6.75%から5.25%に引き下げる可能性を示しています。この成長鈍化は、国内経済の停滞を反映しており、消費者の購買意欲や企業の投資活動に影響を及ぼしています。
2. 高インフレ率の継続
バングラデシュでは、2024年3月のインフレ率が9.81%と高止まりしています。高いインフレ率は、消費者の購買力を低下させ、耐久消費財である自動車の購入を控える動きにつながっています。
3. 通貨価値の下落
バングラデシュ・タカの価値が下落しており、輸入品の価格が上昇しています。これにより、日本からの中古車の価格が高騰し、需要の減少につながっています。
4. 国内自動車産業の発展
バングラデシュ政府は、国内の自動車産業の育成を目指し、現地生産や組立てを奨励しています。これにより、輸入中古車に対する需要が減少している可能性があります。
これらの要因が複合的に影響し、2024年11月の日本からバングラデシュへの中古車輸出は大幅な減少を見せました。
中古車輸出 減少割合3位 シンガポール (-21.4%)
10月: 776台 → 11月: 610台
2024年11月、日本からシンガポールへの中古車輸出は、10月の776台から610台へと**約21.4%**の減少を記録しました。この減少の背景には、以下の要因が考えられます。
1. シンガポールの自動車所有規制
シンガポールでは、車両所有を厳しく管理するために車両所有権証明書(COE)制度が導入されています。COEの価格は需要と供給によって変動し、高騰することが多いため、新規の車両購入や中古車の輸入に対するハードルが高くなっています。
COE価格の変動状況
2024年9月4日:小型車と低出力車用のカテゴリーAのCOE価格が、今年最高額となる96,490シンガポールドルを記録しました。
2024年9月18日:オープンカテゴリー(カテゴリーE)のCOE価格が113,104シンガポールドルに達し、2023年12月以来の最高値となりました。
2024年12月18日:大型車や高出力車、電気自動車(EV)向けのカテゴリーBのCOE価格が109,000シンガポールドルとなり、12月4日の103,010シンガポールドルから5.8%増加しました。
これらの価格上昇は、シンガポール政府がCOEの発行数を調整し、車両台数を管理していることに起因しています。需要と供給のバランスにより、COE価格は大幅に変動する可能性があり、最近では一回の入札で40,000シンガポールドル変動したケースも報告されています。
このようなCOE価格の高騰は、新規の車両購入や中古車の輸入に対するハードルを高めており、シンガポール国内での自動車市場に大きな影響を与えています。
2. 環境政策の強化
シンガポール政府は、環境保護の観点から低排出ガス車両や電気自動車(EV)の普及を推進しています。これに伴い、古い内燃機関を搭載した中古車の需要が減少し、輸入台数の減少につながっている可能性があります。
3. 経済状況と消費者需要の変化
シンガポールの経済成長率や消費者の購買力の変動も、自動車市場に影響を与えています。経済の不確実性や消費者の購買意欲の低下が、中古車の需要減少につながった可能性があります。
4. 日本国内の中古車市場動向
2024年の日本国内では、中古車相場の高騰と海外輸出の活況が見られました。しかし、11月には中古車登録台数が減少する結果となり、全体的な輸出にも影響を及ぼした可能性があります。
国名 | Country name | 10月 | 11月 | 増減割合 |
ロシア | RUSSIA | 18,525 | 14,750 | -20.4% |
アラブ首長国連邦 | UAE | 22,920 | 22,855 | -0.3% |
モンゴル | Mongolia | 9,883 | 9,664 | -2.2% |
タンザニア | Tanzania | 7,052 | 9,953 | 41.1% |
ニュージーランド | NEW ZEALAND | 6,520 | 7,022 | 7.7% |
バングラデシュ | BANGLADESH | 1,472 | 1,099 | -25.3% |
フィリピン | PHILIPPINE | 3,621 | 3,749 | 3.5% |
タイ | Thailand | 4,670 | 5,343 | 14.4% |
ケニア | KENYA | 5,471 | 7,679 | 40.4% |
ジャマイカ | JAMAICA | 2,421 | 3,134 | 29.5% |
南アフリカ共和国 | SOUTH AFRICA | 4,971 | 5,480 | 10.2% |
マレーシア | MALYSIA | 3,066 | 1,936 | -36.9% |
チリ | CHILE | 7,825 | 6,567 | -16.1% |
ウガンダ | Uganda | 3,056 | 3,186 | 4.3% |
オーストラリア | AUSTRALIA | 1,466 | 1,837 | 25.3% |
ザンビア | Zambia | 1,442 | 1,615 | 12.0% |
英国 | United Kingdom | 2,001 | 2,216 | 10.7% |
アメリカ合衆国 | United states of america | 1,523 | 1,464 | -3.9% |
モザンビーク | Mozambique | 1,181 | 1,212 | 2.6% |
ガイアナ | Guyana | 2,745 | 2,372 | -13.6% |
コンゴ民主共和国 | Democratic Republic of the Congo | 1,946 | 2,252 | 15.7% |
アイルランド | Ireland | 1,253 | 1,286 | 2.6% |
ミャンマー | Myanmar | 2,558 | 3,498 | 36.7% |
ナイジェリア | Nigeria | 2,092 | 1,698 | -18.8% |
ジョージア | Georgia | 1,319 | 1,490 | 13.0% |
フィジー | Fiji | 937 | 930 | -0.7% |
ガーナ | Ghana | 1,240 | 1,044 | -15.8% |
シンガポール | SINGAPORE | 776 | 610 | -21.4% |
ジンバブエ | Zimbabwe | 1,107 | 1,266 | 14.4% |
バハマ | Bahamas | 811 | 1,024 | 26.3% |
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