2025年8月|日本の中古車輸出トレンド分析 増減の要因とは?
- fukada93
- 10月14日
- 読了時間: 8分
月次動向の中古車輸出の統計解析(7月→8月)
急増TOP2
オーストラリア(+62.1%):1,289台 → 2,089台
ジャマイカ(+41.5%):2,347台 → 3,321台
急減BOTTOM2
マレーシア(-51.6%):4,470台 → 2,162台
チリ(-40.6%):6,562台 → 3,896台
この記事では、TOP1・2(豪州/ジャマイカ)とBOTTOM1・2(マレーシア/チリ)に絞って、現地の一次情報・信頼ソースを横断しつつ、「なぜそう動いたか」を実務者目線で読み解きます。


いま中古車輸出で何が起きている?(全体スナップショット)
為替(円安の持続)が“買い手通貨側”の購買力を底上げ。例えば AUD/JPY は7–8月平均で約96前後と、豪州から見た仕入れコストは追い風でした。 OFX (NZ)
ただし、港湾・物流は8月にかけて断続的に混雑・計画停止が発生し、出港・入港のタイミングで月次の“見かけの”台数が振れやすい環境でした(豪州ブリスベンのIT停止、豪州・NZ向けピークサーチャージ等)
🔍 オーストラリアの中古車輸入が急増した要因
🏆 1位:オーストラリア(+62.1%)
💡 なぜ急増?
— 規制の“受け皿”+円安+ロジの波が重なった—
エグゼクティブ・サマリー
規制面:豪州はRVSA(Road Vehicle Standards Act)の下、輸入にはROVERでの承認が必須。加えて、25年ルール(製造後25年以上)はSEVSの対象外で比較的スムーズに持ち込める“王道ルート”。この“25年の壁”を超える車種が増える2024–25年は、JDMクラシックの入着波が発生しやすい。 Infrastructure Australia+2Infrastructure Australia+2
為替面:**AUD/JPY≒96(7–8月の月末水準)**で推移し、仕入れコストは良好。 OFX (NZ)
ロジ面:8月の港湾オペ更新・混雑により、入着が月をまたいで“カタマリ”やすく、小さな絶対台数でも伸び率が跳ねる(1,289→2,089台)。 Explorate+1
背景をもう少し詳しく
制度の器
豪州への輸入はRVSA下のインポート・アプルーバルが前提(ROVERで申請)。SEVSは“国内で流通していないが価値のある車”の導管で、25年超は別枠(コンセッショナル)で比較的手続が軽い。「25年の節目」を迎える人気JDMの層が厚く、需要の波が巡航しやすい局面です。 Infrastructure Australia+2Infrastructure Australia+2
価格・資金調達の地合い
円安×豪ドル高めの組み合わせは、オークション落札~CIFの総額を押し下げる方向。7–8月水準のAUD/JPY約96は、“買い手通貨”の視点で有利でした。 OFX (NZ)
物流の脈(到着の偏り)
8月はブリスベンのIT停止(8/21)やピークシーズン課金など、運航・ヤード事情に起因する小幅な遅延が散見。月をまたぐ到着偏在が起きやすく、相対的に8月の受入が膨らんだ可能性があります。 Explorate+1
実務ポイント
仕入れ:25年ルール適格化スケジュールを車種ごとに棚卸し(製造年月ベース)。ROVERの審査所要を織り込む。 Infrastructure Australia
販売・在庫:為替ヘッジ(AUD建・円建バランス)とROROの便替えで月ズレ対策。
コンプラ:RVSA準拠/RAV登録要件とSEVS該当性の事前確認を徹底。
🔍 ジャマイカの中古車輸入が急増した要因
🏆 2位:ジャマイカ(+41.5%)
💡 なぜ急増?
— 制度の安定+リテール資金の下支えー
エグゼクティブ・サマリー
制度面:乗用車の年式制限“6年”やPSI(出荷前検査)義務など、輸入枠組みが明確で、ディーラーの発注オペが安定。 Trade Board+1
需要面:**リミッタ付きの金融環境(政策金利5.75%据え置き)**と、**家計の外貨流入(送金)**が継続。**7月の送金流入は前年比+4.6%**と堅調で、買い替え需要の呼び水に。 Bank of Jamaica+1
価格面:円安で日本側FOBが有利(USD建て決済のケースでも、川上での落札価格形成を通じて恩恵)。
現地レギュレーションの要点
年式制限(主要カテゴリー6年):Trade Boardの公表基準が運用の芯。 Trade Board
PSI(出荷前検査):JAAIがPSICを発行、輸入許可の必須書類。通関の安定化に寄与。 inspections.jp
マーケットの地合い
金融:BOJの政策金利は8月時点で5.75%を維持。過度に引き締めない“中立寄り”で、オートローンの取得環境は大荒れしていません。 Bank of Jamaica+1
家計キャッシュフロー:**7月の送金流入が前年比+4.6%**と堅調(季節要因を勘案しても悪くない)。中古車購入の頭金原資として効いています。 Bank of Jamaica
実務ポイント
仕入れ:年式上限(6年)とPSI要件の照合を入札前に。 Trade Board+1
販売:地場金融(BOJ金利の横ばい)×送金シーズンを販促カレンダーに反映。 Bank of Jamaica+1
リスク:PSIのスロット逼迫や船便の遅延に備え、2便先までのブッキングを推奨。
🔍 マレーシアの中古車輸入が急減した要因
❌ 1位:マレーシア(-51.6%)
💡 なぜ急減?
— “制度拡大の反動”に、8月は手続き負荷も重なった—
エグゼクティブ・サマリー
2024年の政策転換で“急拡大”→その反動:2024年7月、Open APの申請主体が広がり“再調整局面”でも輸入は膨らみましたが、月次では乱高下が起きやすい構造に。 Carz Automedia Malaysia
8月の手続き変更:8/11付で原産地証明(CO)の自動承認を停止(手作業審査へ)。通関のリードタイム延伸が生じやすい環境。 MITI
為替は“むしろ中古車輸出の追い風”:2025年はMYR/JPYが春以降持ち直し(円に対してリンギ強め)で、価格要因だけ見れば輸入促進的。今回の落ち込みは、為替より制度・オペ要因の比重が高いと見ます。 Wise+1
補足メモ
AP制度の入口はMITIのePermit運用。輸入の“物理的なキャパ”より、権利・手続のレールが需給に効く国です。 MITI
税制の撹乱要因だったHVGT(高額品税)は7/30に導入見送りが正式化。今回の減少の主因ではありません。 Paul Tan's Automotive News
取り締まり強化(無税物品の押収ニュース等)も散見され、8月は“書類・査察の重さ”が乗った月でした。 Carz Automedia Malaysia
実務ポイント
通関:CO自動承認停止に伴う書類審査時間の上振れを前提に到着月の平準化を。 MITI
商流設計:Open APの枠と**港(Port Klang中心)**のヤード滞留をモニタ—、RORO/コンテナの使い分けで遅延回避。 https://aaajapan.com/
🔍 チリの中古車輸入が急減した要因
❌ 2位:チリ(-340.6%)
💡 なぜ急減?
— 通貨安+“自由区”の構造+需要の一服ー
エグゼクティブ・サマリー
構造:チリは原則“中古車の輸入禁止”(自由区〔Iquique等〕を除く)。したがって、日本からの中古車は**自由区経由・“解放”(課税して国内流通化)**の仕組みに依存。制度的なボトルネックに左右されやすい。 aduana.cl+1
通貨:8月のドル観測値はCLP950–1,010程度まで弱含み。CIF+関税・内税の総額が嵩み、**“買い控え”**を誘発。 si3.bcentral.cl+1
需要:**8月の新車販売は前年比-3.1%**と一服。家計・企業サイドの慎重姿勢が中古輸入にも波及。 La Tercera
実務ポイント
価格設計:CLPベースの感応度が高い国。見積りはCLP/US$・運賃・保険の3点同時ヘッジで。
販売リード:自由区の“解放”要件・所要を前倒しで案内し、滞留→解放のリードタイムを短縮。 Chile Atiende
主要な示唆(四国横断)
為替ドライバーの非対称性
豪州・ジャマイカは円安のプラス効果がそのまま需要へ。
チリは自国通貨安(CLP安)が価格を押し上げる負の弾みに。 OFX (NZ)+1
制度と“運用変更”の影響は月次を大きく歪める
マレーシアのCO自動承認停止のように、“入口の審査の重さ”がその月の数字を直撃。 MITI
ロジの“波”を前提にした販売・船積みカレンダーを
IT停止やピークサーチャージは月跨ぎのバラツキを増幅。2便先ブッキング+到着分散が有効。 Explorate+1
よくある質問(2025年8月のまとめ)
Q1:一番伸びたのは? なぜ?
A:オーストラリア(+62.1%)。25年ルールの受け皿+円安+ロジの月跨ぎが重なったと解釈します。制度はRVSA/ROVER・SEVSがベース、25年超は別枠で比較的スムーズ。 Infrastructure Australia+2Infrastructure Australia+2
Q2:2番手の伸び、ジャマイカは?
A:+41.5%。年式制限6年・PSIで実務が安定、送金の底堅さや金利横ばいが小売の資金面を下支え。 Bank of Jamaica+3Trade Board+3inspections.jp+3
Q3:一番落ちたマレーシア、何が起きた?
A:-51.6%。2024年のAP拡大で“器”は広がった一方、8/11以降のCO自動承認停止で書類審査が重くなった月。為替(MYR/JPY)はむしろ追い風なので、制度・オペ要因が主因。 Carz Automedia Malaysia+2MITI+2
Q4:チリの落ち込みの要点は?
A:-40.6%。**自由区依存の構造(原則中古車輸入禁止)**に加え、CLP安で着荷コスト上昇、新車販売も鈍化。需要がひと息ついたタイミング。 aduana.cl+2si3.bcentral.cl+2
参考ソース(一次情報・現地メディア)
豪州:輸入承認(ROVER)とRVSA、SEVS・25年ルール、州レベルのライセンス案内。 DoT Transport Website+3Infrastructure Australia+3Infrastructure Australia+3
為替(AUD/JPY):RBA/為替ヒストリカル。 OFX (NZ)+2Reserve Bank of Australia+2
ジャマイカ:年式制限(Trade Board)、PSI(JAAI)、政策金利・送金(BOJ)。 Bank of Jamaica+3Trade Board+3inspections.jp+3
マレーシア:AP制度(MITI)、CO自動承認停止告知、HVGT見送り報道、為替(MYR/JPY)。 Exchange Rates UK+3MITI+3MITI+3
チリ:中古車輸入の原則禁止(自由区例外)、ドル観測値、8月の販売動向。 aduana.cl+2Bcentral+2
最後に(アクションに落とす)
豪州向け:25年ルールの適格化カレンダーをモデル別に作成→ROVER申請の前倒し。
ジャマイカ向け:PSIスロットの先取り+送金ピーク(夏季)連動の販促。
マレーシア向け:CO手続の追加リードを織り込み、船積み分散(RORO/コンテナ)で“月ズレ”を減らす。
チリ向け:CLPヘッジと自由区“解放”の前倒し段取りで価格上振れリスクを抑制。
詳報(国別のモデル別適格表・港湾スケジュール・仕向け別コストシミュレーター)が必要でしたら、この“月次の型”で国別レポートをすぐにお作りします。
国名 | Country name | 7月 | 8月 | 増減割合 |
ロシア | RUSSIA | 17,045 | 15,184 | -10.9% |
アラブ首長国連邦 | UAE | 19,292 | 18,883 | -2.1% |
モンゴル | Mongolia | 3,558 | 3,239 | -9.0% |
タンザニア | Tanzania | 9,389 | 11,929 | 27.1% |
ニュージーランド | NEW ZEALAND | 5,518 | 6,237 | 13.0% |
バングラデシュ | BANGLADESH | 2,246 | 2,041 | -9.1% |
フィリピン | PHILIPPINE | 3,257 | 3,035 | -6.8% |
タイ | Thailand | 2,707 | 2,731 | 0.9% |
ケニア | KENYA | 8,037 | 7,385 | -8.1% |
ジャマイカ | JAMAICA | 2,347 | 3,321 | 41.5% |
南アフリカ共和国 | SOUTH AFRICA | 4,692 | 4,806 | 2.4% |
マレーシア | MALYSIA | 4,470 | 2,162 | -51.6% |
チリ | CHILE | 6,562 | 3,896 | -40.6% |
ウガンダ | Uganda | 3,401 | 2,687 | -21.0% |
オーストラリア | AUSTRALIA | 1,289 | 2,089 | 62.1% |
ザンビア | Zambia | 2,486 | 1,591 | -36.0% |
英国 | United Kingdom | 2,681 | 2,117 | -21.0% |
アメリカ合衆国 | United states of america | 1,195 | 1,521 | 27.3% |
モザンビーク | Mozambique | 1,511 | 1,547 | 2.4% |
ガイアナ | Guyana | 2,963 | 2,674 | -9.8% |
コンゴ民主共和国 | Democratic Republic of the Congo | 1,538 | 1,214 | -21.1% |
アイルランド | Ireland | 1,312 | 1,003 | -23.6% |
ミャンマー | Myanmar | 78 | 50 | -35.9% |
ナイジェリア | Nigeria | 2,982 | 2,243 | -24.8% |
ジョージア | Georgia | 1,272 | 875 | -31.2% |
フィジー | Fiji | 798 | 726 | -9.0% |
ガーナ | Ghana | 2,951 | 2,219 | -24.8% |
シンガポール | SINGAPORE | 254 | 225 | -11.4% |
ジンバブエ | Zimbabwe | 1,449 | 1,489 | 2.8% |
バハマ | Bahamas | 797 | 729 | -8.5% |
For more details, Please inquire for further details.
Thank you for your continued support of Japan Carrier.
The Japan Carrier Team
👉 過去レポート一覧はこちら:
過去の統計記事







コメント