📈【2025年10月中古車輸出の統計分析】「台数」の時代から「選別」の時代へ。米国・ジョージア急伸とアフリカ停滞が示す、輸出ビジネスの構造的転換点
- fukada93
- 2025年12月20日
- 読了時間: 7分
2025年も残すところあと僅かとなりました。 先日発表された10月の財務省貿易統計(確報値)は、私たち中古車輸出業者にとって、過去数年で最も「残酷」かつ「明確」なメッセージを突きつけています。
結論から申し上げます。 「先進国・抜け道市場への資金集中」と「途上国市場の購買力枯渇」による、完全な二極化です。
表面上の数字だけを追っていると、ビジネス判断を見誤ります。なぜアメリカが57%も伸び、逆にジャマイカが36%も落ち込んだのか? その背景にある「法的根拠」と「マクロ経済の裏付け」を紐解きながら、2026年に向けた生存戦略を解説します。


1. 北米・英語圏:「25年ルール」と「環境規制」の実需
10月の統計で最大のサプライズだったのは、アメリカ(+57.1%)とニュージーランド(+20.4%)の躍進です。これは一時的なブームではなく、明確な法的根拠に基づいた動きです。
🇺🇸 アメリカ合衆国(1,624台 / +57.1%)
【要因】MY2000(2000年式)の解禁 この急増の主因は、米国の輸入規制免除(25年ルール)における「2000年製造車」の解禁です。 特に2025年後半から、R34スカイライン(後期型)、S15シルビア、そして高年式の軽トラック・軽バンの解禁日が到来しました。これらは「移動手段」ではなく、円安(1ドル150円台)をレバレッジにした「投資商品」として動いています。
【裏付け】NHTSA(米国運輸省道路交通安全局) FMVSS(連邦自動車安全基準)の免除規定において、製造月による解禁スケジュールは厳格に決まっており、10月の数字はこの「カレンダー通りの需要」が顕在化したものです。
🇳🇿 ニュージーランド(6,055台 / +20.4%)
【要因】Clean Car Standard(CCS)への適応完了 制度導入直後の混乱が収束し、現地のインポーターが「輸入可能な車種(高効率ハイブリッド、PHEV)」を特定し、年末商戦に向けて在庫積み増しを行いました。
【裏付け】NZ Transport Agency CO2排出量に応じた課金・リベート制度が定着したことで、アクアやノートe-POWERなどの特定車種への需要が集中していることが統計からも読み取れます。
2. ユーラシア大陸:「制裁」が生んだ巨大な物流歪み
ロシア向け(+9.0%)の堅調さと、ジョージア向け(+51.6%)の爆発的増加はセットで考えるべきです。
🇬🇪 ジョージア(1,580台 / +51.6%)
【要因】CIS圏への「迂回ハブ」機能の確立 ロシアへの直行便リスク(送金凍結や船腹不足)を嫌気したバイヤーが、ジョージア(ポティ港)を経由し、陸路で中央アジア・ロシアへ車両を送るルートを確立させました。国内需要(人口370万人)だけでは説明がつかないこの数字は、明らかに「再輸出(Re-export)」の実績です。
【裏付け】Geostat(ジョージア統計局)貿易データ 同国の統計でも「自動車」が最大の輸出品目となっており、輸入された日本車の多くが即座に近隣国へ転送されている実態と合致します。
🇷🇺 ロシア(19,302台 / +9.0%)
【要因】利用税(Scrappage Tax)増税前の駆け込み ロシア政府による輸入車に対する利用税引き上げの動きを見越し、現地ディーラーが冬場の4WD需要と合わせて在庫確保に走りました。
【裏付け】ロシア連邦政府令 国内自動車産業保護を目的とした利用税改定のスケジュールと、輸入台数の増加は過去の統計上も強い相関関係にあります。
3. アフリカ・中南米:「金融引き締め」による市場機能不全
一方で、アフリカやカリブ海諸国の落ち込みは深刻です。これは「車が欲しくない」のではなく、「買う手段がない」状態です。
🇯🇲 ジャマイカ(1,705台 / -36.5%) & 🇧🇸 バハマ(-35.9%)
【要因】金利上昇によるローン審査厳格化 米国の金利高止まりの影響を受け、現地金融機関がオートローンの審査基準(Credit Approval)を厳格化しています。エンドユーザーに購入意欲があっても、ファイナンスが通らずキャンセルになるケースが多発しています。
【裏付け】ジャマイカ中央銀行(BOJ)政策金利 インフレ抑制のための高金利政策が続いており、これが耐久消費財である自動車販売を直撃しています。
🇳🇬 ナイジェリア(2,204台 / -19.1%)
【要因】外貨準備枯渇によるL/C発行停止 現地通貨ナイラ(NGN)の暴落とドル不足により、中央銀行経由での正規送金がほぼ麻痺しています。
【裏付け】CBN(ナイジェリア中央銀行)外貨準備統計 実勢レートと公定レートの乖離が拡大しており、輸入業者が決済資金を調達できない「流動性の危機」が数字に表れています。
📊 2025年10月 国別輸出実績サマリー(確定値)
トレンド | 国名 | 台数 (Units) | 前月比 (MoM) | 市場概況とJapan Carrierの視点 |
投資需要 | USA | 1,624 | ⏫ +57.1% | 25年ルール適用車の爆買い。高単価・高利益市場へ変貌。 |
物流ハブ | GEORGIA | 1,580 | ⏫ +51.6% | 対CIS・ロシア向け迂回ルートとして物流が集中。 |
底堅い | RUSSIA | 19,302 | ↗ +9.0% | 依然として最大の太客。冬需要と駆け込みが継続。 |
先進国 | UK | 3,098 | ↗ +27.1% | ポンド高と環境対応車(HV)への需要回帰。 |
急ブレーキ | JAMAICA | 1,705 | ⏬ -36.5% | 金融引き締めによる市場調整局面。在庫過多に注意。 |
外貨不足 | NIGERIA | 2,204 | ⏬ -19.1% | 決済リスクが極大化。無理な送り込みは厳禁。 |
調整 | TANZANIA | 12,360 | ↘ -0.9% | インフレによる購買力低下で横ばい。 |
(出典:財務省貿易統計 2025年10月確報値)
🔮 アナリストの提言:2026年に向けたポートフォリオ戦略
10月の統計は、これまでの「薄利多売モデル(アフリカ・中南米メイン)」の限界を示唆しています。 インフレと金利上昇に弱い途上国への依存度を下げ、「高くても金払いごの良い国」へシフトできるかが、来期の勝負を分けます。
✅ 今すぐ見直すべき3つのポイント
北米・オセアニア向け在庫の拡充 手間はかかりますが、北米向けの規制対応やクリーニングを徹底し、高単価車両を扱う体制を作ってください。
アフリカ・カリブ海向けの与信管理 ジャマイカやナイジェリア向けは、「見込み発注」を停止し、完全オーダーベース(着金確認後手配)に切り替えるべきタイミングです。
「複雑な物流」への対応 ジョージアやモンゴル経由の陸送ロジスティクスを使いこなせる業者が、ロシア・CIS圏の需要を独占できます。
Japan Carrierでは、北米向けの特殊なコンテナ積みノウハウや、ジョージア経由の最新物流ルート情報を提供しています。 市場の構造変化に乗り遅れないよう、ぜひ弊社のロジスティクス・チームにご相談ください。
❓ Market FAQ:10月統計から読み解く懸念点
Q. アメリカの「+57.1%」は一過性のバブルではないか?
A. 短期的には継続しますが、2026年以降は「質の選別」が始まります。 現在の急増は「MY2000解禁」という構造要因によるもので、少なくとも2026年前半まではこのトレンド(R34後期、S15等の解禁ラッシュ)が続きます。ただし、現地在庫が積み上がり始めると価格調整が入るため、「何でも高値で売れる」フェーズは終わり、コンディションの良い個体のみが生き残るでしょう。
Q. ロシア・ジョージア向けの「規制リスク」は現在どうなっているか?
A. 物流ルート自体は安定していますが、「決済」の監視が最大のリスクです。 ジョージア経由の物流網(ポティ港ルート)は確立されており、物理的な輸送リスクは低減しています。しかし、G7による二次制裁(迂回輸出への監視)が強化されており、コルレス銀行を経由するドル送金が突如停止するリスクは常にあります。代替通貨や第三国決済のオプションを持たない参入は推奨しません。
Q. アフリカ市場(ナイジェリア・ジャマイカ)の回復時期は?
A. 2026年Q2以降まで「冬の時代」が続くと予測されます。 現地のインフレ・通貨安は構造的なものであり、数ヶ月で解消する見込みは薄いです。特にナイジェリアは外貨準備高の回復、ジャマイカは米国の利下げ転換(現地のローン金利低下)が確認できるまでは、本格的な回復は見込めません。今は「耐える時期」です。
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