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2026年2月の日本中古車輸出を読む

  • 6月22日
  • 読了時間: 9分

中古車輸出 タンザニア・アイルランドが急伸、マレーシア・バングラデシュが後退した理由


分析担当: 数値補正、月次増減、前年比較

中古車輸出コンサルタント: 輸入規制、決済、物流、商品戦略

ブロガー・編集: 市場背景と経営判断の統合

政策・規制情報:2026年6月22日時点

中古車輸出国の市場分析

分析前に必要なデータ補正

ご提示の表では「1月」となっている列は、数値の構造上、実際には1~2月累計と判断される。

例えばマレーシアは、表の11,325台が「1月8,105台+2月3,220台」と一致する。したがって、実際の1月実績は次の式で求めた。


実質1月台数=表の1月欄-2月台数

e-Statを基にした輸出統計でも、マレーシアの2026年1月は8,105台、2月は3,220台と掲載されている。以下のランキングは、ご提示データを固定して再計算した。なお、貿易統計は後日少数の訂正が入ることがあるため、公開時には最新版の再確認が必要である。


増減率で見たTOP2・BOTTOM2

区分

実質1月

2月

増減台数

前月比

上昇率1位

タンザニア

8,542台

18,711台

+10,169台

+119.0%

上昇率2位

アイルランド

1,167台

2,174台

+1,007台

+86.3%

下落率1位

マレーシア

8,105台

3,220台

▲4,885台

▲60.3%

下落率2位

バングラデシュ

2,147台

1,504台

▲643台

▲29.9%

対象30市場の合計は、実質1月の10万7,704台から2月の13万2,528台へ2万4,824台、23.0%増加した。30市場中25市場が増加している。

したがって2月は、中古車輸出市場全体が悪化した月ではない。マレーシアとバングラデシュの減少は、世界共通の需要後退というより、それぞれの許認可、金融、在庫、政治日程などの個別要因を検討すべき動きである。

なお、増減台数で順位を付けると、上位はタンザニアの+10,169台とロシアの+4,293台、下位はマレーシアの▲4,885台とキプロスの▲828台となる。アイルランドの2位は、比較対象となる1月の母数が小さいことによる「低ベース効果」を含むため、増減率と増減台数は分けて評価する必要がある。


TOP1 タンザニア


国内需要だけでは説明できない「東・中部アフリカ向け物流需要」


タンザニアは1月の8,542台から2月は18,711台へ増え、前月比119.0%。4市場の中でも、増加率と増加台数の双方で突出した。

最新版の統計でも、2026年2月は18,854台とされ、2025年2月の8,774台を大幅に上回っている。単なる1月の反動だけではなく、2025年から続く市場拡大が背景にあると考えられる。


経済面では、タンザニアのGDPは2025年上期に約5.8%成長し、鉱業、建設、金融サービス、輸出が成長を支えた。インフレが低く、外貨市場も改善しており、輸入車需要を支えやすいマクロ環境だった。

ただし、輸出台数をすべてタンザニア国内の最終需要とみなすべきではない。ダルエスサラーム港は同国の国際貿易の約95%を扱うとともに、ザンビア、コンゴ民主共和国、ブルンジ、ルワンダ、マラウイ、ウガンダ、ジンバブエなど内陸国への玄関港でもある。タンザニア向け統計には、広域物流やトランジット需要が反映されている可能性が高い。


政情面では、2025年10月の総選挙を巡って抗議活動が発生し、アフリカ連合の監視団も選挙が民主的基準に適合しなかったとの見解を示した。混乱時にはダルエスサラーム港の業務にも支障が出ている。2月の急増は、基礎需要の強さに加え、政治混乱後の物流正常化や船積みロットの集中が重なった可能性がある。これは統計からの推定であり、直接的な因果関係が確認されたわけではない。


輸出実務上の判断:積極姿勢。ただし検査と物流を先行管理する。

タンザニア向け中古車は、日本での船積み前に検査を受け、Certificate of Roadworthinessを取得する必要がある。PVoC対象車両も輸出国での船積み前検査が求められる。仕入れ後に検査不適合が判明すると、船積み延期や保管費用に直結するため、落札前の車両状態確認を徹底すべきである。

また、販売先を「タンザニア国内」と「内陸国向け」に分け、港から最終仕向地までの輸送費、国境手続き、決済回収期間を別々に管理することが重要になる。


TOP2 アイルランド


日本が英国に代わる右ハンドル中古車の供給源へ


アイルランドは1月の1,167台から2月は2,174台となり、前月比86.3%。前年同月の1,287台に対しても約68.9%増えているため、低ベース効果だけでは説明できない。


アイルランド全体でも、2026年2月の輸入中古車登録は7,639台と前年同月比36.5%増、1~2月累計では40%増となった。日本からの輸出増加は、現地の輸入中古車市場そのものの拡大と整合している。

さらに2025年1~9月の日本由来中古車登録は2万6,942台で、前年同期比19.84%増。英国由来の9,790台に対し約2.75倍となった。英国からの輸入が減少する一方、日本が右ハンドル中古車の主要な調達先として存在感を高めている。車種構成はガソリン車が約65%、ハイブリッド車が約25%で、現段階ではEVだけが成長を牽引しているわけではない。


一方、アイルランドは日本から見ればEU域外向け輸出である。現地ではEU域外から輸入された中古車に関税が課され、登録時には関税・VATの支払証明が必要となる。さらに乗用車のVRTは、車両の現地市場価格であるOMSPにCO₂区分を乗じた額と、NOx課徴金を合算して計算される。

NOx数値を証明できない場合、登録遅延や定額課徴につながる可能性もある。したがって、アイルランド向けでは車両価格よりも、CO₂・NOxデータを確実に取得できる型式かどうかが収益を左右する。


アイルランド政府は2030年までに自家用車保有台数の30%を電動化する方針を掲げ、BEV向けのVRT軽減などを実施している。この政策方向を考えると、中期的には低CO₂のハイブリッド、低排出ガソリン車、EVへ商品構成を寄せる必要がある。


輸出実務上の判断:選別的に拡大。

仕入れ時点でCO₂・NOx資料、車台番号、製造年、整備履歴を一体管理し、現地顧客にはFOB価格ではなく、海上運賃、関税、VAT、VRT、NOxを含めた着地原価で提示する。販売後の部品調達や保険加入が容易な車種を選ぶことも、台数拡大以上に重要になる。


BOTTOM1 マレーシア


60%減は市場崩壊ではなく、1月集中と高額車選別の可能性


マレーシアは1月8,105台から2月3,220台へ減少し、前月比60.3%減。今回の対象市場で最大の落ち込みとなった。

しかし、前年との比較では見え方が変わる。2025年1~2月は合計11,110台だったのに対し、2026年1~2月は11,325台で、累計では約1.9%増えている。つまり、2月単月は前年同月比約40%減だが、1月の大量輸出を含めれば市場全体が急縮小したとは断定できない。

さらに平均FOB価格は、1月の約459.7万円から2月は約496.9万円へ約8.1%上昇している。台数が減る一方で単価が上昇していることから、廉価車の全面的な需要消失というより、より高額・高仕様な車両に仕入れを絞った可能性が示唆される。


マレーシアの中古・リコンディショニング車輸入は、MITIのApproved Permit、いわゆるAP制度に左右される。Open APの対象は原則として車齢1年以上5年以下の中古・再生CBU車で、Open APには事前承認が必要である。AP制度は国内産業の秩序ある発展、安全・環境基準の確保などを政策目的としているため、中古車輸入は単純な自由市場ではなく、許認可政策の影響を強く受ける。


一方、マレーシア経済は2025年に5.2%成長し、内需、輸出、投資が拡大していた。したがって、2月の減少をマクロ経済の急激な悪化だけで説明するのは難しい。


輸出実務上の判断:撤退ではなく在庫調整。

AP保有事業者ごとの許可状況、在庫回転、船積み予定を確認し、月次台数ではなく3カ月移動平均で判断すべきである。商品戦略としては、APコストや高い税負担を吸収できる高年式・高仕様・高再販価値車を中心とし、車齢5年の境界に近い車両は避ける必要がある。


BOTTOM2 バングラデシュ


選挙月の不確実性と銀行・信用環境の弱さが重なる


バングラデシュは1月2,147台から2月1,504台へ減少し、前月比29.9%減となった。

最新版では2月が1,505台とわずかに訂正されているが、前年同月の2,618台に対して約42.5%減、1~2月累計でも前年同期比約6.3%減である。マレーシアとは異なり、月次だけでなく前年同月、累計の双方で弱く、より実質的な需要・資金制約が表れている。


政治面では、2月12日に2024年の政変後初となる総選挙が実施された。選挙前には、政治的安定の回復が産業活動に不可欠とされ、選挙後はBNPが大勝した。輸出減少との直接的な因果関係は確認できないものの、選挙前後に輸入業者がL/C開設、仕入れ、在庫投資を一時的に抑えた可能性はある。

より大きな問題は金融環境である。IMFによると、銀行部門の不良債権比率は2025年6月末時点で34%に上昇し、民間信用の伸びは名目7.6%、実質ではマイナス2%と歴史的な低水準だった。自動車のような高額輸入商品では、輸入業者の信用枠や小売ローンの縮小が販売・仕入れ双方に影響する。

規制面では、原則として船積み時点で車齢5年以下、右ハンドル、原産国からの直接輸入が必要である。日本出港前にはJAAI検査証明書を取得し、現地輸入業者はIRCを保有しなければならない。決済も原則L/Cで行われる。


輸出実務上の判断:信用管理を最優先した慎重姿勢。

車両を仕入れてからL/C開設を待つのではなく、確認済みL/Cまたは銀行承認を先行させるべきである。車齢制限ぎりぎりの車両は、船期遅延によって輸入不適格になる危険があるため、製造年に十分な余裕を持たせる。為替変動、港湾保管、書類不備による追加費用も価格に織り込む必要がある。


4市場の経営判断

市場

推奨スタンス

判断の核心

タンザニア

積極拡大+リスク管理

国内需要と広域トランジット需要。ただし政情・港湾・検査リスクを管理

アイルランド

選別的拡大

日本調達への構造転換。CO₂・NOxと着地原価が利益を左右

マレーシア

維持・高付加価値化

2月減だけで撤退判断しない。AP、在庫、商品単価を重視

バングラデシュ

慎重・信用優先

選挙後の安定化を見極めつつ、L/Cと銀行信用を先行確認


まとめ


分析担当の結論は、2月の輸出市場は全体として強く、対象30市場の合計は23.0%増加しているということだ。下落市場は世界需要の悪化ではなく、国別事情で説明する必要がある。

中古車輸出コンサルタントの結論は、今後の収益差が「何台売れるか」だけではなく、タンザニアの船積み前検査、アイルランドの排出ガス証明、マレーシアのAP、バングラデシュのL/Cといった、輸入前のコンプライアンス管理によって生まれるということである。


2026年2月は、中古車輸出市場が一律に拡大・縮小した月ではない。タンザニアとアイルランドでは「物流圏の拡大」と「調達先の構造転換」が進み、マレーシアとバングラデシュでは「許認可」と「金融環境」が月次実績を左右した。次の成長市場を見抜くには、輸出台数だけでなく、港、決済、税制、車齢、排出ガス、政治日程までを一つの収益モデルとして捉える必要がある。

Region

国名

Country name

1月

2月

Asia

アラブ首長国連邦

UAE

35,778

18,023

Africa

タンザニア

Tanzania

27,253

18,711

Europe

ロシア

RUSSIA

26,681

15,487

South America

チリ

CHILE

14,425

7,256

Oceania

ニュージーランド

NEW ZEALAND

12,666

7,039

Africa

ケニア

KENYA

9,998

6,182

Africa

南アフリカ共和国

SOUTH AFRICA

10,249

5,749

Asia

スリランカ

SLILANKA

10,518

5,382

Asia

モンゴル

Mongolia

9,698

4,991

Asia

マレーシア

MALYSIA

11,325

3,220

Asia

タイ

Thailand

6,682

3,910

Europe

キプロス

CYPLUS

6,296

2,734

Asia

フィリピン

PHILIPPINE

5,627

2,947

Europe

英国

United Kingdom

4,838

3,076

Africa

ウガンダ

Uganda

4,190

2,723

South America

ガイアナ

Guyana

4,215

2,306

Africa

ガーナ

Ghana

3,993

2,337

Africa

ザンビア

Zambia

3,598

2,220

North America

ジャマイカ

JAMAICA

3,506

2,255

Europe

アイルランド

Ireland

3,341

2,174

Asia

バングラデシュ

BANGLADESH

3,651

1,504

Africa

コンゴ民主共和国

Democratic Republic of the Congo

2,900

1,798

Oceania

オーストラリア

AUSTRALIA

3,133

1,533

Africa

ナイジェリア

Nigeria

2,803

1,604

Africa

ジンバブエ

Zimbabwe

2,481

1,567

Asia

ジョージア

Georgia

2,773

1,355

North America

アメリカ合衆国

United states of america

2,167

1,271

Africa

モザンビーク

Mozambique

2,200

1,238

South America

スリナム

SRINUM

1,746

1,018

Asia

ミャンマー

Myanmar

1,501

918


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