2026年3月 中古車輸出分析:UAEショックとマレーシア・モンゴル急伸の裏側
- 6月28日
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マレーシア・モンゴルが急伸、UAE・バハマが落ち込んだ理由
2026年3月の日本中古車輸出は、表面
だけを見ると大きな変化が見えにくい月だった。
今回の対象30カ国合計は、2月の125,067台から3月は126,515台へ、+1,448台、+1.2%の増加である。30市場中22市場が増加し、8市場が減少した。
したがって、3月の中古車輸出は「世界需要が悪化した月」ではない。むしろ、UAEという巨大な中継市場が急停止する一方で、マレーシア、モンゴル、ロシア、チリ、南アフリカなどが台数を押し上げた月と見るべきである。
今回注目すべき増減率ランキングは次の通りである。
区分 | 国 | 2月 | 3月 | 増減台数 | 前月比 |
上昇率1位 | マレーシア | 3,220台 | 5,791台 | +2,571台 | +79.8% |
上昇率2位 | モンゴル | 4,991台 | 8,104台 | +3,113台 | +62.4% |
下落率1位 | UAE | 18,023台 | 1,499台 | ▲16,524台 | ▲91.7% |
下落率2位 | バハマ | 548台 | 412台 | ▲136台 | ▲24.8% |
ただし、プロ向けの分析では、増減率だけで判断してはいけない。マレーシアは上昇率1位だが、2月に大きく落ち込んだ後の反発である。モンゴルは上昇率だけでなく増加台数も大きい。UAEは減少率・減少台数ともに突出しており、3月統計全体を歪めるほどのインパクトがある。一方、バハマは減少率2位だが、減少台数は136台にとどまる。
ここから先は、国別に背景を分解していく。
上昇率1位:マレーシア
2月の落ち込みから反発。ただしAP市場であることを忘れてはいけない
マレーシアは2月の3,220台から3月は5,791台へ増加し、前月比+79.8%となった。増加台数は+2,571台であり、今回の対象国の中でも大きな回復である。
ただし、これは単純な需要爆発ではなく、2月の落ち込みからの反発として読むべきである。先月の分析では、マレーシアは1月から2月にかけて大きく減少していた。つまり、3月の増加は「市場が新たに急拡大した」というより、AP、在庫、船積み、登録タイミングが再び動いた可能性が高い。
マレーシア向け中古車輸出で最も重要なのは、MITIのApproved Permitである。MITI公式ページでは、Open APの対象を「1年以上5年以下の中古・リコンディションCBU車・二輪」としている。これは、マレーシアが完全な自由輸入市場ではなく、APを持つ事業者の枠、商品選定、在庫戦略に台数が左右される市場であることを意味する。
現地マクロ環境は悪くない。マレーシア経済は2026年1〜3月に前年同期比5.3%成長し、製造業、サービス、建設が成長を支えた。中央銀行も2026年の成長率見通しを4〜5%へ引き上げている。
一方で、マレーシアの新車市場は月次で祝日・工場稼働・新モデル投入の影響を受けやすい。4月の自動車販売は3月比で回復し、MAAは3月のRaya休暇後の生産回復や新モデル投入を要因としている。 これは、中古・リコン車の輸入にも、現地在庫や登録タイミングの波があることを示唆する。
輸出実務上の判断:拡大。ただし高付加価値・AP適合車に絞る
マレーシア向けでは、台数だけを追うべきではない。APコスト、税負担、登録条件を吸収できる高年式・高仕様車に絞る必要がある。
特に注意すべきは、車齢5年の境界に近い車両である。船期遅延、書類不備、現地側の登録遅れが起きると、利益だけでなく輸入適格性にも影響する。仕入れ時点で、年式、初度登録、製造年、グレード、修復歴、現地販売価格を一体で確認すべきである。
3月の+79.8%はポジティブだが、マレーシアは「誰でも売れる市場」ではない。AP保有者との関係、車齢管理、着地原価の精度が利益を決める市場である。
上昇率2位:モンゴル
日本中古車依存とハイブリッド需要が続く
モンゴルは2月の4,991台から3月は8,104台へ増加し、前月比+62.4%となった。増加台数は+3,113台で、上昇率だけでなく増加台数でも非常に大きい。
モンゴルは、日本中古車輸出にとって特殊な市場である。CNAによると、モンゴルの車両輸入の約80%は日本からで、そのうち95%が中古車である。さらに、同国の車両保有約150万台のうち45%がハイブリッド車で、プリウスが圧倒的な存在感を持つ。
この背景には、燃費、部品供給、価格、整備ノウハウがある。ウランバートルの都市部では燃費の良いハイブリッドが支持され、地方では荒れた道路や長距離移動に耐える実用性が評価されている。モンゴルではEVの普及には充電インフラ、寒冷地性能、長距離移動という課題が残るため、現時点ではHEVが現実的な選択肢になっている。
経済面でも、モンゴルは鉱業主導の回復が続いている。世界銀行は、鉱業・サービスの回復、農業の正常化、公共投資などを背景に、2026〜2027年も5%台前後の成長を見込んでいる。
ただし、モンゴル向けは楽観一辺倒ではない。CNAは、ウランバートルでは2025年から10年超の車両登録制限が運用され始めたと報じている。 これにより、単に安い古い車を大量に送る戦略は徐々にリスクを増す。
輸出実務上の判断:積極拡大。ただし年式・電池・寒冷地適性を重視
モンゴル向けでは、プリウス、アクア、フィット、ノートなどの燃費系コンパクトに加え、RAV4、エクストレイル、フォレスター、ランドクルーザー系などのAWD・SUV需要も引き続き強い。
ただし、今後は「安いから売れる」だけでは不十分である。ハイブリッドバッテリーの状態、寒冷地での始動性、足回り、下回り、ラジエーター、エアコン、ヒーター、タイヤ状態まで含めて商品化する必要がある。
特にプリウス系は、販売後のバッテリー不良が現地の信頼低下に直結する。輸出前にバッテリー診断、警告灯、補機バッテリー、冷却系、修復歴を確認し、現地バイヤーに状態説明を明確に出すべきである。
3月のモンゴル増加は、単なる月次ノイズではない。日本中古車依存、ハイブリッド実需、経済成長、規制前の在庫確保が重なった構造的な強さとして評価できる。
下落率1位:UAE
需要消滅ではなく、ドバイ再輸出ハブの一時停止
UAEは2月の18,023台から3月は1,499台へ激減し、前月比▲91.7%となった。減少台数は▲16,524台で、今回の30市場全体の中で圧倒的に大きい。
この落ち込みは、UAE国内の中古車需要が突然消滅したと見るべきではない。UAE、特にドバイは、日本中古車の最終消費地であると同時に、中東、アフリカ、中央アジア向けの再輸出ハブである。DUCAMZは中古車をアフリカ・アジア向けに再輸出する拠点として機能してきた。
2026年3月は、このハブ機能に大きな障害が出た月だった。Reutersは、イラン情勢とホルムズ海峡の混乱により、日本・韓国から中東向けの中古車輸出が滞留し、ドバイに向かえない船舶、スリランカや中国への荷揚げ、船積みキャンセル、追加保証金要求などが発生したと報じている。
さらに、Reutersは4月の日本から中東向け自動車輸出が数量・金額ともに前年比90%以上減少したとも報じており、3月のUAE急減は一過性の統計異常ではなく、物流リスクが実績に出始めたものと考えられる。
加えて、2026年のUAEではラマダンが2月19日頃から3月19日頃まで続き、3月20日頃がEid Al Fitrと見込まれていた。 ラマダン期は行政・通関・物流の稼働時間が短くなりやすく、Eid前後には処理能力が落ちる。物流業界でも、ラマダン中はUAE・GCCの業務時間短縮や通関・ヤード処理の遅れが課題になるとされている。
輸出実務上の判断:新規船積みは慎重。既存案件は回収と滞留管理を優先
UAE向けで最も避けるべきは、台数の反発を期待して無条件に仕入れを続けることである。
3月の数字は、現地需要よりも船積み・入港・中継・再輸出のリスクを示している。したがって、当面は以下を優先すべきである。
船会社の寄港状況、迂回条件、フリータイム、デマレージ、保険条件、入金条件を確認する。ドバイ到着後の再輸出先がどこかを把握する。最終バイヤーの資金力と在庫保管能力を確認する。高額車・ラグジュアリー車は、滞留時の資金拘束が大きいため、前受金やキャンセル条件を厳格にする。
UAEは長期的には重要市場であり続ける。しかし、2026年3月時点では「売れる市場」ではなく、物流リスクを管理できる業者だけが扱うべき市場である。
下落率2位:バハマ
小型市場の減少。悲観ではなく着地原価の感応度を読む
バハマは2月の548台から3月は412台へ減少し、前月比▲24.8%となった。減少率では2位だが、減少台数は▲136台にすぎない。
したがって、バハマを「市場悪化」と断定するのは早い。バハマはもともと小型市場であり、船積みロット、通関タイミング、在庫補充、現地販売店の資金繰りによって月次台数が大きく振れやすい。
ただし、バハマ向けで無視できないのは、着地原価の重さである。バハマ税関資料では、1万ドル車両の例に対し、65%関税、1%処理手数料、環境税、保管料、運賃・保険、10%VATなどが加算されている。さらに10年超車両には20%環境税が示されている。
また、タクシー、リバリー、オムニバス向けには、5年以下車両を対象とする免税・優遇条件が示されているが、これは誰にでも適用されるものではなく、ライセンス保有者や用途制限を伴う。
現地経済は観光と建設に支えられている。バハマ中央銀行は、2026年も観光、特にクルーズ部門と建設が成長を支えると見ている。一方で、中東情勢によるエネルギー価格・輸送費上昇は、輸入品価格や自動車燃料のコストを押し上げ得ると指摘している。
輸出実務上の判断:数量追求ではなく、総額提示と用途別提案
バハマ向けでは、FOB価格だけで売ってはいけない。顧客が実際に見るのは、CIF、関税、VAT、環境税、港湾費用、登録費用を含めた総支払額である。
乗用車であれば、燃費の良いコンパクト、状態の良い小型SUV、部品供給が容易な日本車が中心になる。観光・送迎・建設関連では、ハイエース、キャラバン、コースター、小型トラックなども候補になるが、用途別の優遇条件や車齢条件を確認する必要がある。
3月の▲24.8%は注意すべき数字だが、撤退判断をする水準ではない。バハマは台数で攻める市場ではなく、着地原価を正確に説明できる輸出業者が勝つ市場である。
4市場の経営判断
市場 | 推奨スタンス | 判断の核心 |
マレーシア | 選別的に拡大 | AP適合、高年式、高仕様、着地原価管理 |
モンゴル | 積極拡大 | 日本中古車依存、ハイブリッド実需、寒冷地適性 |
UAE | 慎重・物流優先 | 需要よりも航路・再輸出ハブ・滞留リスク |
バハマ | 維持・案件選別 | 小型市場、税負担、観光・商用需要、総額提示 |
まとめ
2026年3月の中古車輸出は、全体では+1.2%と小幅増だった。しかし中身は大きく動いている。
マレーシアは2月の落ち込みから反発し、AP市場として再び動き出した。モンゴルは日本中古車とハイブリッドへの構造的需要を背景に大きく伸びた。UAEは需要消滅ではなく、ホルムズ海峡とドバイ再輸出ハブの停止によって急減した。バハマは小型市場特有の月次変動だが、税負担と輸送費上昇への感度が高い。
3月の結論は明確である。
中古車輸出は、台数だけでは読めない。マレーシアではAP、モンゴルではハイブリッドと寒冷地適性、UAEでは航路と再輸出、バハマでは着地原価が利益を左右する。
次の成長市場を見抜くには、増減率を見るだけでなく、港、通関、税制、車齢、決済、現地販売価格までを一つの収益モデルとして捉える必要がある。
国名 | Country name | 2月 | 3月 |
ロシア | RUSSIA | 15,487 | 19,424 |
アラブ首長国連邦 | UAE | 18,023 | 1,499 |
モンゴル | Mongolia | 4,991 | 8,104 |
タンザニア | Tanzania | 18,711 | 16,106 |
ニュージーランド | NEW ZEALAND | 7,039 | 8,772 |
バングラデシュ | BANGLADESH | 1,504 | 1,750 |
フィリピン | PHILIPPINE | 2,947 | 3,452 |
タイ | Thailand | 3,910 | 4,107 |
ケニア | KENYA | 6,182 | 6,605 |
ジャマイカ | JAMAICA | 2,255 | 1,793 |
南アフリカ共和国 | SOUTH AFRICA | 5,749 | 7,661 |
マレーシア | MALYSIA | 3,220 | 5,791 |
チリ | CHILE | 7,256 | 9,395 |
ウガンダ | Uganda | 2,723 | 4,237 |
オーストラリア | AUSTRALIA | 1,533 | 2,059 |
ザンビア | Zambia | 2,220 | 2,021 |
英国 | United Kingdom | 3,076 | 2,938 |
アメリカ合衆国 | United states of america | 1,271 | 1,453 |
モザンビーク | Mozambique | 1,238 | 1,502 |
ガイアナ | Guyana | 2,306 | 2,697 |
コンゴ民主共和国 | Democratic Republic of the Congo | 1,798 | 1,935 |
アイルランド | Ireland | 2,174 | 2,265 |
ミャンマー | Myanmar | 918 | 987 |
ナイジェリア | Nigeria | 1,604 | 2,275 |
ジョージア | Georgia | 1,355 | 1,741 |
フィジー | Fiji | 850 | 736 |
ガーナ | Ghana | 2,337 | 2,981 |
シンガポール | SINGAPORE | 275 | 337 |
ジンバブエ | Zimbabwe | 1,567 | 1,480 |
バハマ | Bahamas | 548 | 412 |
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